
コラムを月に2本ずつ公開して半年、自社サイトのアクセス数は少しずつ増えてきたのに、資料請求はほとんど届かない。営業部門からも「問い合わせが増えた実感がない」と言われている。そんな状況ではありませんか。
BtoBの購買では、記事を読んだ担当者がその場で問い合わせることはまれです。比較や社内の承認を経て商談に進むため、記事を増やすだけでは途中の段階を支えるコンテンツが抜け落ちます。この記事で解説するのは、BtoBのコンテンツマーケティングの基本と、コンテンツの種類・検討段階ごとの設計・進め方・KPI・よくある失敗例です。記事を読めば、見込み客を商談まで育てるために自社が最初に決める項目がわかります。BtoBのコンテンツマーケティングで成果を出す近道は、記事の本数を増やす前に、検討段階ごとの役割と営業部門へ渡す基準を決めることです。
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BtoBのコンテンツマーケティングとは見込み客の検討に役立つ情報で商談まで導く手法
BtoBのコンテンツマーケティングは、企業の担当者や決裁者が抱える課題に役立つ情報を発信し、見込み客との関係を築いて商談や受注につなげる手法です。広告のように一度の表示で購入を迫るのではなく、検討が進むたびに必要な情報を届けて、自社を選ぶ理由を少しずつ積み上げます。
コンテンツマーケティングは、価値があり関連性の高いコンテンツを一貫して届け、明確に定めた読者を引きつけて関係を保つマーケティングの手法を指します。最終的なゴールは、利益につながる顧客の行動を促すことです。
BtoBでコンテンツが担う役割は、大きく分けてリードの獲得とリードの育成の2つです。リードとは自社の商品やサービスに関心を持つ見込み客の情報を指し、問い合わせや資料のダウンロードで得た会社名や連絡先が該当します。獲得したリードに継続して情報を届け、購買意欲を高めていく活動はリードナーチャリングと呼ばれます。検討期間の長いBtoBでは、獲得と育成の両方をコンテンツで支える設計が、成果を左右する分かれ目です。
BtoBとBtoCのコンテンツマーケティングの違い
BtoBのコンテンツマーケティングを個人の消費者に向けたBtoCと同じ発想で進めると、記事は読まれても商談につながらない状態に陥ります。違いを生むのは、企業が製品を買うときの意思決定の仕組みです。BtoBとBtoCのコンテンツマーケティングの主な違いは、以下の3つです。
- 購買の意思決定に複数の担当者が関わる
- 検討期間が長く何度も接点が必要になる
- 費用対効果を説明できる判断材料が求められる
購買の意思決定に複数の担当者が関わる
BtoBの購買では、製品を実際に使う現場の担当者・予算を管理する部門・最終的に承認する決裁者など、立場の違う複数の人が判断に関わります。現場の担当者は使いやすさを重視し、決裁者は費用と効果の釣り合いを重視するなど、立場ごとに知りたい情報が異なります。
コンテンツを立場ごとに作り分ける理由は、社内の誰か1人の疑問が残るだけで検討が止まるからです。担当者向けの記事で関心を持ってもらい、決裁者が確認する資料で費用と効果を示すと、社内での説明がしやすくなります。担当者が上司に説明するときの材料になるコンテンツは、受注までの距離を縮める役割を持ちます。
検討期間が長く何度も接点が必要になる
BtoBの製品は金額が大きく導入後の業務への影響も大きいため、情報収集から契約までの検討期間が長くなります。1回の接触で購買が決まることはまれで、見込み客は検索や資料、セミナーなどで何度も情報に触れながら比較を進めます。
検討期間が長いBtoBでは、最初の接点で問い合わせを求めるより、次の接点につながる行動を用意するほうが現実的です。記事を読んだ人に関連する資料のダウンロードを案内し、ダウンロードした人にメールで事例やセミナーを届ける流れを作ると、検討が進むまで関係を保てます。接点が途切れた見込み客は、検討を再開したときに別の会社の情報から比較を始めます。
費用対効果を説明できる判断材料が求められる
BtoBの購買では、担当者が上司や決裁者に導入の理由を説明し、社内の承認を得る必要があります。感覚的な好みではなく、費用に対してどれだけの効果が見込めるかを数字や事例で示せるかが判断の分かれ目です。個人が感情や流行で買う場面も多いBtoCの商品と違い、BtoBの製品は論理的な根拠をそろえないと承認が下りません。判断材料になるコンテンツは、以下のとおりです。
- 同じ業種や規模の会社の導入事例
- 導入前後の業務の変化を示した資料
- 料金と導入までの流れをまとめた資料
- ほかの解決方法との比較をまとめた資料
判断材料を先にWebで公開しておくと、担当者は営業と話す前に社内の説明を準備できます。
BtoB企業がコンテンツマーケティングに取り組むメリット
広告や展示会と比べて、コンテンツマーケティングは成果が出るまでに時間がかかる手法です。それでも取り組む価値がある理由は、時間をかけた分だけ社内に資産が残る点にあります。BtoB企業がコンテンツマーケティングに取り組むメリットは、以下の4つです。
- 営業が接触する前の情報収集の段階で接点を持てる
- 公開したコンテンツが資産として残る
- 営業活動の一部を効率化できる
- 見込み客の関心を行動の記録から把握できる
営業が接触する前の情報収集の段階で接点を持てる
企業の担当者は、課題に気づいた段階でまず自分で検索して情報を集めます。課題を解決する方法を解説した記事は、営業がまだ接点を持っていない会社の担当者に自社を知ってもらう入り口です。展示会や紹介では出会えなかった地域や業種の会社とも、Web上で最初の接点を作れます。
検索から訪れる読者は、自分で課題を調べている最中の人です。押し売りではなく相手の調べものに答える形で関係が始まるため、後の提案も受け入れられやすくなります。
公開したコンテンツが資産として残る
広告は出稿を止めると表示も止まりますが、自社サイトに公開した記事や資料は、公開を続ける限り読まれ続けます。1本のホワイトペーパーが継続して新しいリードを生み、過去の記事が検索から読者を連れてくる状態を作れれば、リード1件あたりの獲得費用を抑えられます。
資産として機能する条件は、内容が古くならないように手入れを続けることです。料金や法律、ツールの仕様のように変わる情報を含むコンテンツは、定期的に見直す日を決めておきます。
営業活動の一部を効率化できる
営業担当者が商談のたびに説明している内容をコンテンツにしておくと、説明の手間を減らせます。よく聞かれる質問への回答・導入までの流れ・料金の考え方を事前に読んでもらえば、商談の時間を相手の個別の課題に使えます。同じ資料を新人の営業担当者も使うことで、担当者ごとの説明の差を小さくすることが可能です。
営業部門から商談でよく聞かれる質問を集める仕組みを作ると、コンテンツのテーマ探しにも困りません。
見込み客の関心を行動の記録から把握できる
Webのコンテンツは、誰がどのページを読み、どの資料をダウンロードしたかを記録できます。料金のページを何度も見ている、導入事例を続けて読んでいるといった行動は、検討が進んでいる合図です。行動の記録を営業部門と共有すれば、連絡する相手と時期を絞り込めます。
行動の記録と会社名を結び付ける前提は、資料のダウンロードなどで連絡先を登録してもらうことです。連絡先を受け取るフォームでは、個人情報の利用目的を示すなどの対応が欠かせません。
BtoBのコンテンツマーケティングで使うコンテンツの種類
BtoBのコンテンツマーケティングで使うコンテンツは、記事だけではありません。見込み客の検討段階によって求める情報の深さが違うため、形式を組み合わせて使います。BtoBのコンテンツマーケティングで使う主なコンテンツは、以下の7つです。
- SEO記事
- ホワイトペーパー
- 導入事例
- ウェビナーとセミナー
- メールマガジン
- 動画
- 製品・サービス資料
SEO記事
SEO記事は、検索エンジンで調べものをする人に向けて、自社サイトのコラムやブログに掲載する記事です。SEOは検索エンジン最適化の略で、検索結果で自社のページが見つかりやすくなるように整える取り組みを指します。業務の課題や用語、解決方法を調べている担当者に読まれるため、まだ自社を知らない見込み客との最初の接点になります。
SEO記事の役割は、問い合わせを直接取ることより、資料のダウンロードやメールマガジンの登録など次の行動へ案内することです。検索結果への反映には時間がかかり、数時間で反映される変更もあれば数か月かかる変更もあります。公開や修正の効果は、数週間待ってから検索結果への影響を確かめるのが基本です。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは見込み客にとって役立つ情報をまとめた資料で、BtoBではリードを獲得する手段として広く使われています。資料をダウンロードする前に会社名や連絡先を入力してもらう形が一般的で、記事だけでは得られない連絡先を得られます。ホワイトペーパーの主な型は、以下の4つです。
- 課題の分析と解決策を示す課題解決型
- 実務で記入して使うワークシート型
- 導入の成功例を紹介する事例紹介型
- 調査結果や業界の動向をまとめたレポート型
ホワイトペーパーの型は、読ませたい相手の検討段階で選びます。課題に気づいたばかりの人には課題解決型、比較を始めた人には事例紹介型が向いています。
導入事例
導入事例は、自社の製品やサービスを導入した会社が、どんな課題をどう解決したかをまとめたコンテンツです。同じ業種や同じ規模の会社の事例は、見込み客が「自社でも使えるか」を判断する材料になり、社内の承認を得るための説明資料としても使えます。
事例の説得力を高めるのは、導入前の状況・導入した理由・導入後の変化を具体的に書くことです。事例に取引先の会社名や担当者の発言を載せるときは、公開の範囲を事前に取引先と合意しておきます。社名を出せない場合も、業種と従業員の規模を示せば、読む側は自社と比べやすくなります。
ウェビナーとセミナー
ウェビナーはオンラインで開くセミナーで、参加の申し込み時に連絡先を得られるうえ、講師と参加者が質問を通じてやり取りできます。文章では伝わりにくい製品の操作や、専門的な内容の解説に向いています。開催後の録画を公開すれば当日に参加できなかった人にも届けられ、1回の準備を何度も生かせる形式です。
参加者から出た質問は見込み客が実際に迷っている点を映していて、次の記事や資料のテーマにも使えます。
メールマガジン
メールマガジンは、資料のダウンロードやセミナーの申し込みで連絡先を登録した人に、定期的に情報を届けるコンテンツです。検討がすぐには進まない見込み客との接点を保ち、新しい記事や事例、セミナーの案内を届ける役割を持ちます。
広告や宣伝のメールについては、原則としてあらかじめ同意した相手にだけ送れるオプトイン方式が特定電子メール法で定められています。メールには送信者の氏名または名称と、配信停止を受け付ける連絡先の表示も必要です。連絡先を受け取るフォームにメールマガジンの配信に同意する欄を設けておけば、後から送ってよい相手かどうかで迷いません。
動画
動画は、製品の画面や操作の流れ、導入後の働き方など文章や図だけでは伝わりにくい内容を見せられる形式です。製品の紹介動画や操作の解説、ウェビナーの録画などを、自社サイトや動画共有サービスで公開します。
動画は撮影と編集に手間がかかるため、まずはウェビナーの録画を短く区切って使う方法が負担の少ない始め方です。動画と同じ要点を文章でも掲載しておくと、動画を再生しない人や検索から訪れた人にも内容が伝わります。
製品・サービス資料
製品・サービス資料は、自社の製品の機能・料金・導入までの流れ・サポートの内容をまとめた資料です。比較を始めた見込み客が最も知りたいのは製品が自社の条件に合うかどうかで、製品・サービス資料は合うかどうかの判断に直接答えます。
担当者は社内の比較表を作るときにも上司への説明資料を作るときにも製品・サービス資料を使うため、比較される前提で項目をそろえておくことが大切です。ホワイトペーパーが課題の解決方法を中立的に解説する資料であるのに対し、製品・サービス資料は自社の製品を説明するための資料です。2つの役割を分けておくと、検討の初期の人に製品の説明を押し付ける失敗を防げます。
BtoBのコンテンツマーケティングは検討段階ごとにコンテンツを割り当てる
コンテンツの種類をそろえても、どの段階の誰に読ませるかが決まっていなければ、見込み客は途中で離れます。見込み客が購入に至るまでの道のりを段階に分けて描いたものはカスタマージャーニーと呼ばれ、BtoBでは段階ごとにコンテンツを割り当てる設計の土台になります。検討段階ごとに割り当てるコンテンツの例は、以下の表のとおりです。
| 検討段階 | 見込み客の状態 | 割り当てるコンテンツの例 | 次に促す行動 |
|---|---|---|---|
| 課題に気づく段階 | 業務の困りごとを言葉にし始めている | 課題の原因や用語を解説するSEO記事 | 関連するホワイトペーパーのダウンロード |
| 情報収集の段階 | 解決の方法を調べて比べ始めている | 課題解決型のホワイトペーパー、ウェビナー | メールマガジンの登録、ウェビナーへの参加 |
| 比較検討の段階 | 製品やサービスの候補を絞っている | 導入事例、製品・サービス資料、動画 | 個別相談やデモの申し込み |
| 社内承認の段階 | 上司や決裁者への説明を準備している | 費用と効果の説明資料、導入までの流れ | 見積もりの依頼 |
4つの段階それぞれでコンテンツを考えるときの方針は、次の4つです。
- 課題に気づく段階は課題を言葉にする記事で接点を作る
- 情報収集の段階は解決方法を比べる資料で連絡先を得る
- 比較検討の段階は事例と製品資料で候補に残る
- 社内承認の段階は決裁者向けの説明材料を渡す
課題に気づく段階は課題を言葉にする記事で接点を作る
課題に気づく段階の見込み客は、製品を探しているのではなく、業務の困りごとの原因や解決の方向性を調べています。まだ買う段階にない読者に製品の売り込みを始めると、読者は記事から離れてしまいます。
課題に気づく段階のコンテンツは、課題の原因や用語、ほかの会社の取り組み方を中立的に解説する記事が中心です。記事の最後には内容をさらに深めたホワイトペーパーを案内し、次の段階への入り口を用意します。
情報収集の段階は解決方法を比べる資料で連絡先を得る
情報収集の段階に入った見込み客は、解決の方法をいくつか比べ、自社に合う進め方を探しています。解決方法の選択肢を整理した課題解決型のホワイトペーパーや、専門家が解説するウェビナーは、比べる材料を求める見込み客に読まれやすいコンテンツです。
資料やウェビナーの申し込みで連絡先を受け取れるため、情報収集の段階は匿名の読者が見込み客の名簿に変わる分かれ目にあたります。連絡先を受け取った後は、メールマガジンで関連する記事や事例を届け、比較検討の段階に進むまで接点を保ちます。
比較検討の段階は事例と製品資料で候補に残る
比較検討の段階では、見込み客は複数の製品やサービスを並べ、機能・料金・導入の手間を比べています。比較の候補に残るために必要なのは、自社の製品が見込み客の条件に合うことを具体的に示すコンテンツです。
比較検討の段階を支えるのは、同じ業種の導入事例と製品・サービス資料、操作の様子がわかる動画です。導入事例を何本も読んだ見込み客には個別相談を案内するなど、読まれたコンテンツに応じて次の一歩を示します。
社内承認の段階は決裁者向けの説明材料を渡す
社内承認の段階では、担当者が上司や決裁者に導入の理由を説明し、予算の承認を得ようとしています。担当者が自分で説明資料を一から作る負担は大きく、説明の材料がそろわないことは検討が止まる原因の1つです。
費用と効果の考え方・導入までのスケジュール・導入後のサポート体制をまとめた資料を用意しておけば、担当者は社内の説明に転用できます。決裁者は費用だけでなく導入に失敗したときのリスクも気にするため、導入後の支援の内容も判断材料になります。
BtoBのコンテンツマーケティングの進め方
BtoBのコンテンツマーケティングでは、記事を書き始める前に目的と読者、営業部門への引き渡しの基準を決めておくことが欠かせません。先に決めておかないと、公開した後で何を成果として測ればよいかがわからなくなります。BtoBのコンテンツマーケティングを進める手順は、以下の7つです。
- 目的と数値目標を決める
- 担当者と決裁者のペルソナを設定する
- 検討段階ごとのテーマ一覧を作る
- 制作体制と公開の頻度を決める
- コンテンツから問い合わせまでの導線を設計する
- 営業部門とリードの引き渡しルールを決める
- 公開後に効果を測って改善する
目的と数値目標を決める
最初に決めるのは、コンテンツマーケティングで何を増やしたいのかです。新しい取引先との商談を増やしたいのか、既存の取引先への追加の提案を増やしたいのかで、作るコンテンツも測る指標も変わります。
目的が決まった後の作業は、期限と数字を入れた目標に置き換えることです。例えば「1年後にコンテンツ経由の商談を毎月◯件にする」のように、営業部門が成果として認める単位で目標を置くと、途中の指標も逆算しやすくなります。目標の数字は、現在の問い合わせの件数と商談に進む割合を出発点にすると、現実から離れすぎずに済みます。
担当者と決裁者のペルソナを設定する
ペルソナとは、コンテンツを届けたい読者を1人の具体的な人物として描いたものです。BtoBでは購買に複数の人が関わるため、製品を使う現場の担当者と、導入を承認する決裁者を分けて設定します。ペルソナに書き込む項目は、以下のとおりです。
- 業種と従業員の規模
- 部署と役職
- 業務で抱えている課題
- 情報を集めるときに使う手段
- 導入を決めるときに社内で説明が必要な相手
ペルソナは想像だけで作らず、営業担当者への聞き取りや過去に受注した取引先の情報をもとに作ります。実際の取引先の姿に近いペルソナほど、記事のテーマや言葉選びの判断に使えます。
検討段階ごとのテーマ一覧を作る
ペルソナが決まったら、検討段階ごとに読ませたいテーマを一覧にします。テーマの出どころとして使いやすいのは、以下の3つです。
- 営業担当者が商談でよく受ける質問
- 失注した商談で他社が選ばれた理由
- 見込み客が検索に使うキーワード
営業の現場で集めた質問は見込み客が実際に迷っている点を映していて、検索のキーワードだけでは見つからないテーマを含みます。一覧には、テーマごとに対象のペルソナ・検討段階・コンテンツの形式・次に促す行動を書き込みます。一覧化の利点は、課題に気づく段階の記事ばかりが増えて比較検討の材料が足りない、といった偏りに早く気づけることです。
制作体制と公開の頻度を決める
BtoBのコンテンツマーケティングは、継続して公開することが前提の手法です。担当者が通常業務の合間に1人で書く体制では、忙しい時期に更新が止まりがちです。
制作体制を決めるときは、企画・執筆・専門的な内容の確認・公開作業の担当者を工程ごとに決めます。公開の頻度は、体制の余力から無理なく続けられる数に設定します。途中で止まる多めの目標より、途切れずに続けられる少なめの目標のほうが、見込み客との接点を着実に積み上げられる選択です。
コンテンツから問い合わせまでの導線を設計する
導線とは、コンテンツを読んだ人を次の行動へ案内する道筋のことです。記事の途中や末尾には関連する資料のダウンロードの案内を置き、資料をダウンロードした人には事例やセミナーを案内して、段階を1つずつ進める流れを作ります。入力フォームの項目は、多いほど途中で入力をやめる人が増えるため、営業が最初の連絡に使う項目に絞ります。
資料のダウンロードなどで使う入力フォームでは、個人情報の扱いに注意が必要です。個人情報保護法では、ホームページ上の入力画面で本人から直接連絡先を取得する場合、原則として利用目的を明示する必要があります。利用目的は「お客様のサービスの向上」のような抽象的な書き方では足りず、本人が自分の情報の使われ方を予測できる程度に具体的に書きます。資料の送付に加えてメールマガジンの配信や営業からの連絡にも連絡先を使う予定なら、使い道をフォームの近くに書いておくことが前提です。
営業部門とリードの引き渡しルールを決める
コンテンツで得たリードを成果につなげるには、どの状態のリードを営業部門に渡すかを事前に決めておく必要があります。マーケティング活動で得られ、ある程度まで購買意欲が高まったリードがMQL、営業部門が商談化に向けて働きかけるべき状態のリードがSQLです。MQLの条件をマーケティング部門だけで決めると、営業部門が「まだ買う気のない相手ばかり渡される」と感じ、リードが放置される原因になります。引き渡しのルールとして決めておく項目は、以下のとおりです。
- 営業部門に渡すリードの条件
- 引き渡しのときに共有する情報
- 営業部門が最初に連絡するまでの期限
- 条件に届かないリードの扱い
例えば「料金のページを見て資料を2つ以上ダウンロードした人」のように行動で条件を決め、引き渡しから24時間以内に営業が初回の連絡をすると期限まで決めておけば、運用がぶれません。条件に届かないリードは捨てずに、メールマガジンや事例の案内で育成を続けます。
公開後に効果を測って改善する
コンテンツは公開して終わりではなく、効果を測って手を入れることで成果が伸びます。検索からの集客はGoogle Search Consoleで、サイト内での行動や資料のダウンロードはGoogle アナリティクスで計測するのが基本です。Google アナリティクスでは、資料のダウンロードや問い合わせのように事業の成果にとって特に重要な行動を、キーイベントとして設定して数えます。改善する記事は、以下の基準で選ぶと手を付ける順番が決まります。
- 表示回数は多いのにクリックされない記事
- 読まれているのに資料のダウンロードにつながらない記事
- 情報が古くなった記事
Googleの検索結果への影響は反映までに時間がかかるため、改善の結果を確かめるのは記事を直してから数週間後が目安です。
BtoBのコンテンツマーケティングのKPI
KPIとは、最終的な目標に向かって進んでいるかを途中で確かめるための指標です。BtoBでは受注までの期間が長いため、受注の数だけを見ていると、取り組みの良しあしを判断できるまでに時間がかかりすぎます。段階ごとの主なKPIは、以下の表のとおりです。
| 段階 | 主なKPI | 主な計測の場所 |
|---|---|---|
| 集客 | 表示回数、クリック数、クリック率、平均掲載順位、セッション数 | Google Search Console、Google アナリティクス |
| リード獲得 | 資料のダウンロード数、問い合わせ数、コンバージョン率 | Google アナリティクス、フォームの管理画面 |
| 商談化 | MQLの数、SQLの数、商談の数、商談化率 | MA、SFA、CRM |
| 受注への貢献 | 受注件数、受注金額、コンテンツに触れた取引先の受注 | SFA、CRM |
4つの段階の指標は、次の観点で読み分けます。
- 集客の指標で読まれているかを確かめる
- リード獲得の指標で次の行動につながっているかを確かめる
- 商談化の指標で営業に渡せるリードかを確かめる
- 受注への貢献でコンテンツへの投資を判断する
集客の指標で読まれているかを確かめる
集客の指標は、コンテンツが見込み客の目に触れ、読まれているかを示します。Google Search Consoleでは、自社のページが検索結果に表示された回数を表示回数(インプレッション数)、検索結果からクリックされた回数をクリック数として確認できます。クリック数を表示回数で割った値はクリック率(CTR)と呼ばれ、表示回数に比べてクリックが少ない記事を見つける目安です。
集客の指標は成果の入り口にすぎず、アクセス数が増えても資料のダウンロードが増えなければ、事業への貢献はまだ見えていない状態です。集客の指標は、記事ごとの改善点を探す目的で使います。
リード獲得の指標で次の行動につながっているかを確かめる
リード獲得の指標は、コンテンツを読んだ人が資料のダウンロードや問い合わせなど、連絡先を残す行動を取ったかを示します。サイトを訪れた人のうち目標の行動を取った人の割合が、コンバージョン率です。
記事ごとのコンバージョン率を比べると、読まれているのにリードにつながらない記事と、少ない読者から多くのリードを得ている記事が分かれます。少ない読者から多くのリードを得ている記事は検討が進んだ見込み客に読まれている記事で、関連するテーマを増やす候補になります。反対に、読まれているのにリードにつながらない記事で最初に確かめるべき点は、記事の内容と案内している資料のかみ合い方です。
商談化の指標で営業に渡せるリードかを確かめる
商談化の指標が示すのは、獲得したリードのうち営業部門の商談に進んだ量と割合です。リードの数が多くても、商談に進む割合が低ければ営業部門の手間だけが増えます。MQLの数・SQLの数・商談の数と、リードのうち商談に進んだ割合を示す商談化率を合わせて見ると、リードの質を数字で確かめられます。
リードの情報は、資料のダウンロードやメールの開封などの行動を記録するMA(マーケティングオートメーション)と、営業の活動や商談を管理するSFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)で管理するのが一般的です。マーケティング部門と営業部門が同じ定義で数えないと、MQLの数が増えても商談が増えない理由を説明できません。
受注への貢献でコンテンツへの投資を判断する
最終的に確かめるのは、コンテンツに触れた見込み客からどれだけの受注が生まれたかです。BtoBの受注は、記事・資料・セミナー・営業の提案など、複数の接点を経て決まります。受注した取引先が過去に触れたコンテンツをCRMで確かめる作業は、受注に関わったコンテンツの傾向をつかむ近道です。
受注への貢献は数字が出るまでに時間がかかる指標のため、立ち上げの時期は公開本数や検索順位、リード獲得の数を途中の目安として追います。時間がたつにつれて、判断に使う指標の比重を商談と受注の数字へ移していきます。
BtoBのコンテンツマーケティングでよくある失敗例
BtoBのコンテンツマーケティングで起こりやすい失敗は、記事の出来よりも設計と運用の段階で生まれます。BtoBのコンテンツマーケティングでよくある失敗例は、以下の6つです。
- 自社製品の説明ばかりになる
- 公開本数を目標にして記事を量産する
- 担当者が1人で抱えて更新が止まる
- 獲得したリードを営業部門に渡さず放置する
- 成果が出る前の短い期間で打ち切る
- アクセス数だけで成果を判断する
自社製品の説明ばかりになる
自社の製品を知ってほしい気持ちが強いと、記事の多くが製品の機能紹介や導入の勧めになりがちです。課題に気づいたばかりの見込み客は製品を探していないため、製品の説明から始まる記事は途中で読まれなくなります。
製品の説明は、比較検討の段階に入った人に向けた製品・サービス資料や導入事例に任せます。課題に気づく段階の記事で主役にすべきなのは読者の課題の解決で、自社製品の案内は記事の最後に関連資料を紹介する程度で十分です。
公開本数を目標にして記事を量産する
公開本数だけを目標にすると、検索されやすいキーワードに合わせて中身の薄い記事を増やす運用に陥ります。Googleの自動ランキングシステムは、検索順位の操作を目的に作られたコンテンツではなく、ユーザーにメリットをもたらすことを目的に作られた有用で信頼できる情報を上位に掲載するように設計されています。文字数を稼ぐための水増しや、多くのテーマを自動化で大量に作る運用は、検索エンジンからのアクセスを主な目的にしたコンテンツの典型です。
記事の質を確かめるときは、以下の問いを自社の記事に当てはめます。
- 独自の情報や分析を含んでいるか
- 検索結果のほかのページと比べて実質的な価値があるか
- 急いで雑に作られた印象を与えていないか
本数を目標にするなら、質の基準を満たした記事の本数として数えます。
担当者が1人で抱えて更新が止まる
マーケティングの担当者が1人で企画から執筆、公開まで抱える体制では、本業が忙しい時期に更新が止まります。更新が止まると、資料のダウンロードやメールマガジンで届ける新しい情報も途切れ、育てていた見込み客との接点が細くなります。
更新を止めないための対策は、工程を複数の人で分担することです。営業担当者に題材の提供を頼み、執筆や図版の作成は外部に任せるなど、担当者1人に頼らない仕組みを作ります。
獲得したリードを営業部門に渡さず放置する
資料のダウンロードでリードが増えても、営業部門に渡す基準がなければ、リードは名簿に登録されたまま放置されます。反対に、ダウンロードしたばかりのリードに営業がすぐ電話をかけると、まだ情報を集めている段階の相手には売り込みと受け取られて関係が途切れます。
2つの失敗に共通する原因は、マーケティング部門と営業部門で「商談に進めるリード」の定義がそろっていないことです。引き渡しの条件と連絡の期限を両部門で決め、定期的に結果を振り返って条件を見直します。
成果が出る前の短い期間で打ち切る
BtoBのコンテンツマーケティングは、目に見える成果が表れ始めるまでに半年から1年程度かかるのが目安です。公開から間もない時期に問い合わせが増えないことを理由にやめると、積み上げた記事への投資が成果に変わる前に止めることになります。
短期で打ち切らないためには、始める前に経営層と、どの時期にどの指標で判断するかを合意しておきます。判断に使う指標は、時期に合わせて切り替えるのが現実的です。立ち上げの時期は公開本数と検索順位を見て、続く時期はリードの数、さらに後は商談の数を見ます。
アクセス数だけで成果を判断する
アクセス数は数字が早く動くため、成果の指標として追いやすい数字です。一方で、アクセス数が多い記事が商談につながる記事とは限りません。業務と関係の薄い話題で集めた読者は自社の見込み客ではない場合が多く、アクセス数が増えても資料のダウンロードや商談は増えないままです。
アクセス数は集客の段階の指標として扱い、成果はリードの数と商談の数で判断します。記事ごとにどれだけのリードと商談につながったかを並べると、増やすべきテーマと見直すべきテーマを選べます。
BtoBのコンテンツマーケティングを外部に依頼するときの考え方と費用の実例
BtoBのコンテンツマーケティングは、すべてを社内で担う必要はなく、工程ごとに内製と外注を組み合わせられます。外部に依頼するときに押さえておきたい点は、以下の4つです。
- 社内に残す工程を決める
- 外部に任せやすい工程を選ぶ
- 依頼先の支援範囲と体制を確認する
- 外部支援の費用の実例
社内に残す工程を決める
社内に残すべきなのは、自社にしか持てない情報と判断に関わる工程です。社内に残す工程の例は、以下のとおりです。
- 目的と目標の設定
- ペルソナと検討段階の設計
- 導入事例や営業の現場の知見の提供
- 内容の正確さの最終確認
- 営業部門とのリードの引き渡し
製品の強みや取引先の課題は、営業や開発の現場にいる人が最もよく知っています。外部の書き手に執筆を任せても、題材の提供と最終確認を社内が担えば、自社ならではの一次情報を含むコンテンツになります。
外部に任せやすい工程を選ぶ
記事の執筆・ホワイトペーパーのデザイン・図版の作成・CMSへの入稿のように、手順が決まっていて専門の技術が生きる工程は外部に任せやすい工程です。CMSとは、専門の知識がなくても記事の作成や公開ができるWebサイトの管理システムを指します。キーワードの調査やアクセスの分析も、ツールの扱いに慣れた外部の支援会社に任せると、社内の担当者は企画と営業部門との調整に時間を使えます。
外部に任せる工程が増えるほど費用も増えるため、まずは社内で時間が最もかかっている工程から任せるのが現実的です。
依頼先の支援範囲と体制を確認する
依頼先を比べるときは、金額より先に、どの工程まで支援に含まれるかを確認します。記事の執筆だけを請け負う会社と、戦略の設計から効果の分析まで担う会社では、同じコンテンツマーケティングの支援でも中身が異なります。依頼先に確認する項目は、以下のとおりです。
- 支援に含まれる工程と含まれない工程
- 専門的な内容を確認する担当者の有無
- 自社と近い業種での支援の実績
- 成果の報告の頻度と報告に含まれる指標
- 契約期間の縛りと途中で解約するときの条件
検索順位の保証をうたう会社は、候補から外して構いません。Googleの検索結果で一番上に掲載されることは、どの会社にも保証できないからです。
外部支援の費用の実例
外部支援の費用は、依頼する工程の範囲と記事の本数で大きく変わります。支援会社4社の料金の例を、以下の表にまとめます。いずれも各社が公式サイトで公開している料金(2026年10月時点)です。
| 会社・サービス | 料金の例 | 主な支援内容 |
|---|---|---|
| A社 オウンドメディア支援 | 基本プラン月額40万円、オプション月額3万円から | キーワード戦略の設計、KPI設計、導線設計など。記事やホワイトペーパーの制作はオプション |
| B社 コンテンツマーケティングのプラン | 月額20万円から | コンテンツマーケティング、オウンドメディアの構築と運用 |
| C社 オウンドメディア運用パッケージ | 月額55,000円(税込)、初期費用0円 | キーワード設計、SEO記事月10本の制作、WordPressへの入稿、月次レポート |
| D社 記事作成代行 | 文字単価4.5円から10円(税別) | 記事の執筆と編集(プランによって構成案の作成を含む) |
A社のモデルプランは、リード獲得支援40万円・記事8本の執筆32万円・半年に1本のホワイトペーパー作成5万円・専門家の監修3万円を合わせた月額80万円です。A社とB社の料金には、税込か税別かの表記がありません。
戦略の設計を含む支援と記事の制作に絞った支援では、月額の桁が変わります。費用を比べるときは月額の合計だけでなく、記事1本あたりの金額と、戦略の設計やレポートなど記事以外の作業が含まれるかを並べて確認します。戦略の設計を社内で担える会社は記事の制作に絞った支援を、設計から任せたい会社は戦略を含む支援を選ぶのが、費用と必要な支援をかみ合わせる考え方です。
BtoBのコンテンツマーケティングは検討段階と営業への引き渡しから設計しましょう
BtoBのコンテンツマーケティングは、検討期間が長く複数の人が購買に関わるBtoBの特徴に合わせて、見込み客の検討を段階ごとに支える手法です。記事の本数を増やすことより、どの段階の誰にどのコンテンツを届け、どの状態で営業部門に渡すかを決めることが成果を左右します。BtoBのコンテンツマーケティングを始める前に決めておく項目は、次の5つです。
- 何を増やすための取り組みかと期限つきの数値目標
- 担当者と決裁者のペルソナ
- 検討段階ごとのテーマとコンテンツの形式
- 営業部門へのリードの引き渡し条件と連絡の期限
- 時期ごとに判断に使う指標
5つの項目が決まっていれば、社内で作る部分と外部に任せる部分の線引きも明確になり、見積もりを比べるときの基準もそろいます。成果が見え始めるまで続けられる体制を作ることが、見込み客を商談まで育てる近道です。
まずは営業部門に商談でよく受ける質問を聞き取り、検討段階ごとのテーマ一覧を作るところから始めましょう。
ご依頼・ご相談を検討中の方は、こちらからお問い合わせください。
