
寄付や会員を増やしたいのに、広告に回せる予算がない。NPO法人や一般社団法人の運営では、これがいちばん動かしにくい制約だと思います。ただ、非営利団体には Google の検索広告を月10,000米ドル分まで無償で出せる制度があります。Google Ad Grants(アドグランツ)といいます。この記事では、寄付や会員を集める目的でこの制度を使うときに、何が無償になるのか、自団体が対象になるのか、配信の前に何を決めるのかを順に説明します。
出典:Google Ad Grants 公式サイト/Google for Nonprofits 公式サイト/Google for Nonprofits ヘルプセンター(2026年10月8日確認)
先に正直なことを書いておくと、これは「申請すれば寄付が集まる」制度ではありません。無償になるのは広告費だけで、届け先を決めることと、届いた人を受け止めるページを用意することは自団体の仕事として残ります。
何が無償になるのか
- 月10,000米ドル(1日あたり約329米ドル)までの広告費
- 対象は Google 検索の結果ページに表示されるテキスト広告。ディスプレイや動画は含まれません
- 費用の請求は発生しません。上限を超える分の資金援助もありません
上限いっぱいまで使えば、年間で最大120,000米ドル分になります。ただし公式は「これは制限であり、費用の保証ではありません」と明記しています。枠があることと、その分の広告が実際に出ることは別です。ここは後で触れます。
自団体は対象になるか
Google Ad Grants は、Google for Nonprofits という非営利団体向けプログラムの一部です。まずこのプログラムの団体確認を通す必要があります。公式ヘルプが日本の団体について挙げている法人格は、公益社団法人・公益財団法人・特定非営利活動法人(NPO法人)・社会福祉法人・一般社団法人の5つです。
一方、次の団体は参加できないとされています。
- 政府事業体や政府機関
- 病院や医療団体(関連する慈善部門や財団法人は参加できるとされています)
- 学校、学術機関、大学(教育団体の慈善事業部門は参加できるとされています)
医療や教育に関わる活動をしている団体は、ここが分かれ目になるので申請前に確認してください。法人格ごとの表記や審査の流れはGoogle Ad Grants とは。無償枠で実際にできることに整理しています。
寄付を集める目的で使うときに決めること
Ad Grants の要件は、寄付集めに使う場合にそのまま設計の指針になります。配信の前に決めておくことは4つです。
- 1. 何を成果として数えるか — 公式がコンバージョン目標の例として最初に挙げているのが寄付です。ほかに会員登録、メール配信の登録、ボランティアの登録、情報リクエストの送信などがあります。サイトの滞在時間やトップページの閲覧は、成果として数えないよう指示されています
- 2. 入札の方式 — 公式は、サイトで寄付や会費を計測している場合は「コンバージョン値の最大化」を、それ以外の目標では「コンバージョン数の最大化」をすすめています。寄付額を計測できるかどうかで選ぶ方式が変わります
- 3. 寄付ページをどこに置くか — 広告のリンク先は、団体が所有し管理しているドメインである必要があります。公式のウェブサイトに関するポリシーは、訪問者を外部の寄付ポータルなど第三者のサイトへ自動的に転送することを認めていません。寄付のリンクが正しく機能し、HTTPS の安全なページに移動することも求められます
- 4. どの言葉とどの地域に出すか — 1語のキーワードは原則使えませんが、公式は「寄付」「募金」「チャリティ」「ボランティア」などを例外として挙げています。地域は、活動している場所ではなく支援者がいる場所で考えます。公式も、海外で援助活動をしていて支援者の多くが別の国に住んでいる団体は、支援者のいる国に広告を出すよう例示しています
例外として使える言葉があっても、1語のキーワードは検索の意図が広く、クリック率を下げる要因になりえます。団体が実際に応えられるテーマと組み合わせた複数語のキーワードから組むほうが、要件の維持と両立しやすくなります。
実際にどれくらい集まるのか
Google が公式に成果として掲載している団体には、寄付に関するものがあります。
- Samaritans ── ヘルプライン向けに48,000ドルを超えるオンライン寄付を獲得
- DonorsChoose.org ── 公立学校への寄付を5,000件以上創出
- Days for Girls ── 平均寄付額212ドル
ここで誤解を残さないために、もう一点書いておきます。Ad Grants の広告と有料の広告は、外から見分けがつきません。広告の透明性センターにも区別は表示されません。Google も公式に「追加の Google 広告は別アカウントで購入できる」と書いており、無償枠と有料の広告を併用する道は制度として用意されています。
つまり、大きな団体の華々しい成果をそのまま「無償枠だけで実現できること」と読むのは正確ではありません。上の事例はいずれも海外の団体のもので、日本の団体が同じ結果になることを示すものでもありません。月10,000米ドルは、本気で集める団体にとっては上限ではなく入口だと考えたほうが実態に合います。
始めるまでの流れ
- 1. 参加要件を満たすか確認する ── 法人格が対象か、対象外の団体に当たらないか
- 2. Google for Nonprofits アカウントをリクエストする ── 審査担当パートナーの Goodstack が、申請内容を公的な記録と照合します。審査は通常 2〜14 営業日とされています。登記上の名称と公式サイトの表記を先に揃えておくと手戻りが減ります
- 3. 承認後、Ad Grants を有効化する ── サービスは自動では有効になりません。有効化の審査は通常 3〜5 営業日とされています。この間に自分で Google 広告アカウントを作らないよう、公式が注意しています
- 4. コンバージョンを決めてから配信を始める ── 寄付、会員登録、資料請求、問い合わせなど。これは制度上の必須要件でもあります(後述)
団体確認からアカウント整備までは時間がかかります。特定のイベントや募集に合わせて急に使える制度ではないので、必要になる前から動くものだと考えてください。
始めたあとに続く条件
Ad Grants は、審査に通った時点で終わりではありません。運用中ずっと満たし続ける要件があり、外れるとアカウントは一時停止されます。主なものだけ挙げます。
- クリック率5%以上を毎月維持する(2か月連続で下回ると一時停止)
- 月1回以上のコンバージョンを獲得する(有効な計測が前提)
- 1語のキーワードを使わない/品質スコア1・2のキーワードを残さない
- スマート自動入札を使う/地域ターゲティングを具体的に設定する
要件の全体像と、クリック単価の上限などそれぞれの中身はGoogle Ad Grants とは。無償枠で実際にできることにまとめています。
そしてもう一つ、団体がぶつかりやすいのが「枠は承認されたのに消化できない」という状態です。公式が挙げている原因のひとつは、広告の品質やランディングページの利便性が低いこと。これは入札を上げても解決しません。広告文と着地先の中身を直さないかぎり、掲載順位が上がらず枠が余り続けます。無償なのは広告費であって、使い切る作業は無償になりません。
SINCEED ができること
当社はデジタルマーケティング支援として、Google 広告の設計・運用を行っています。Ad Grants は無償枠という点だけが特殊で、誰に届けるかを決める・広告文とページを作る・成果を計測するという中身は、有料の検索広告とまったく同じ土俵にあります。
「申請したいが対象になるか分からない」「枠は承認されたが消化できない」「一時停止の通知が来た」——どれも原因を分解すれば対処できるものがほとんどです。当社のGoogle Ad Grants 運用支援では、申請準備から配信設計、参加要件の維持までを承っています。まずは状況の整理からご相談ください。ご相談・お見積もりは無料です。
よくある質問
申請にお金はかかりますか?
かかりません。Google for Nonprofits の申請も Ad Grants の利用も無償です。費用が発生するとすれば、広告の運用を外部に依頼する場合の運用費です。
寄付の決済を外部の寄付サービスで受けていても使えますか?
公式のポリシーが認めていないのは、広告のリンク先のドメインが訪問者を第三者のサイトへ自動的に転送する形です。広告の着地先は自団体のドメイン上のページにし、そこで活動と寄付の使い道を説明する構成が前提になります。個別の構成が認められるかどうかは Google の審査によります。
小さな団体でも意味はありますか?
あります。枠の大きさより「届け先を絞れているか」のほうが効きます。全国に広く出すより、支援者がいる地域と、団体が実際に応えられるテーマに絞ったほうが、クリック率の要件とも両立しやすくなります。
職員が1人でも運用できますか?
できますが、放置はできません。クリック率5%や月1回以上のコンバージョンといった条件があり、外れるとアカウントが止まります。止まってから気づくことが多いので、月次で見る担当を決めておくことをおすすめします。
ディスプレイ広告や YouTube 広告にも使えますか?
無償枠の対象は Google 検索のテキスト広告のみです。それ以外が必要な場合は、別アカウントで購入することになります。
営利企業でも使えますか?
使えません。対象は非営利団体です。営利企業向けの無償枠は用意されていません。
本記事の制度内容・要件・公開されている成果事例は、Google for Nonprofits および Ad Grants の公式ページを2026年10月8日に確認した内容です。条件は変更される場合があるため、申請時には公式の最新情報をご確認ください。
