
寄付や会員を増やしたいのに、広告に回せる予算がない。非営利法人の運営では、これがいちばん動かしにくい制約だと思います。ただ、非営利団体には Google の検索広告を月10,000米ドル分まで無償で出せる制度があります。Google Ad Grants といいます。この記事では、何が無償になるのか、自団体が対象になるのか、始めるまでに何をするのかを順に説明します。
先に正直なことを書いておくと、これは「申請すれば寄付が集まる」制度ではありません。無償になるのは広告費だけで、届け先を決めることと、届いた人を受け止めるページを用意することは自団体の仕事として残ります。
何が無償になるのか
- 月10,000米ドル(1日あたり約329米ドル)までの広告費
- 対象は Google.com に表示される検索広告。ディスプレイや動画は含まれません
- 費用の請求は発生しません。上限を超える分の資金援助もありません
金額だけ見ると年間で1,200万円を超える規模です。ただし公式は「これは制限であり、費用の保証ではありません」と明記しています。枠があることと、その分の広告が実際に出ることは別です。ここは後で触れます。
自団体は対象になるか
Google Ad Grants は、Google for Nonprofits という非営利団体向けプログラムの一部です。まずこのプログラムの団体確認を通す必要があります。日本も対象地域に含まれています。
公式が対象外として挙げているのは、次の3類型です。
- 政府事業体または政府組織
- 病院またはヘルスケア企業
- 学校、教育機関、大学(教育機関には Google for Education が別にあります)
裏を返せば、非営利のボランティア組織として活動していて、上に当たらなければ申請できます。日本では NPO法人や一般社団法人などが想定されます。医療や教育に関わる活動をしている団体は、ここが分かれ目になるので申請前に確認してください。
実際にどれくらい集まるのか
Google が公式に成果として掲載している団体には、寄付に関するものがあります。
- Samaritans ── ヘルプライン向けに48,000ドルを超えるオンライン寄付を獲得
- DonorsChoose.org ── 公立学校への寄付を5,000件以上創出
- Days for Girls ── 平均寄付額212ドル
ここで誤解を残さないために、もう一点書いておきます。Ad Grants の広告と有料の広告は、外から見分けがつきません。広告の透明性センターにも区別は表示されません。規模の大きい団体は両方を使っていることが普通で、Google も公式に「追加の Google 広告は別アカウントで購入できる」と書いています。
つまり、大きな団体の華々しい成果をそのまま「無償枠だけで実現できること」と読むのは正確ではありません。月10,000米ドルは、本気で集める団体にとっては上限ではなく入口だと考えたほうが実態に合います。
始めるまでの流れ
- 1. 参加要件を満たすか確認する ── 上の3類型に当たらないか、非営利として活動実態があるか
- 2. Google for Nonprofits アカウントをリクエストする ── Google の確認パートナーが団体を確認します。登記内容と公式サイトの表記が食い違っていると止まります。申請前に揃えておくと早く済みます
- 3. 承認後、Ad Grants に登録する ── 4つのサービスは自動では有効になりません。使うものを自分で登録します
- 4. コンバージョンを決めてから配信を始める ── 寄付、会員登録、資料請求、問い合わせなど。これは制度上の必須要件でもあります(後述)
団体確認からアカウント整備までは時間がかかります。特定のイベントや募集に合わせて急に使える制度ではないので、必要になる前から動くものだと考えてください。
始めたあとに続く条件
Ad Grants は、審査に通った時点で終わりではありません。運用中ずっと満たし続ける要件があり、外れるとアカウントは一時停止されます。主なものだけ挙げます。
- クリック率5%以上を毎月維持する(2か月連続で下回ると一時停止)
- 月1回以上のコンバージョンを獲得する(有効な計測が前提)
- 1語のキーワードを使わない/品質スコア1・2のキーワードを残さない
- スマート自動入札を使う/地域ターゲティングを具体的に設定する
要件の全体像と、それぞれの中身はGoogle Ad Grants とは。無償枠で実際にできることにまとめています。
そしてもう一つ、多くの団体がぶつかるのが「枠は承認されたのに消化できない」という状態です。公式が挙げている原因のひとつは、広告の品質やランディングページの利便性が低いこと。これは入札を上げても解決しません。広告文と着地先の中身を直さないかぎり、掲載順位が上がらず枠が余り続けます。無償なのは広告費であって、使い切る作業は無償になりません。
SINCEED ができること
当社はデジタルマーケティング支援として、Google 広告の設計・運用を行っています。Ad Grants は無償枠という点だけが特殊で、誰に届けるかを決める・広告文とページを作る・成果を計測するという中身は、有料の検索広告とまったく同じ土俵にあります。
「申請したいが対象になるか分からない」「枠は承認されたが消化できない」「一時停止の通知が来た」——どれも原因を分解すれば対処できるものがほとんどです。当社のGoogle Ad Grants 運用支援では、申請準備から配信設計、参加要件の維持までを承っています。まずは状況の整理からご相談ください。ご相談・お見積もりは無料です。
よくある質問
申請にお金はかかりますか?
かかりません。Google for Nonprofits の申請も Ad Grants の利用も無償です。費用が発生するとすれば、広告の運用を外部に依頼する場合の運用費です。
小さな団体でも意味はありますか?
あります。むしろ枠を使い切れないのが普通なので、規模より「届け先を絞れているか」のほうが効きます。全国に広く出すより、活動している地域と、団体が実際に応えられるテーマに絞ったほうが成果が出ます。
職員が1人でも運用できますか?
要件の維持だけなら、月に数時間の点検で回せる規模です。ただしクリック率5%や月1回以上のコンバージョンといった条件があるため、放置はできません。止まってから気づくことが多いので、月次で見る担当を決めておくことをおすすめします。
ディスプレイ広告や YouTube 広告にも使えますか?
無償枠の対象は Google.com の検索広告のみです。それ以外が必要な場合は、別アカウントで購入することになります。
営利企業でも使えますか?
使えません。対象は非営利団体です。営利企業向けの無償枠は用意されていません。
本記事の制度内容・要件・公開されている成果事例は、Google for Nonprofits および Ad Grants の公式ページを2026年8月に確認した内容です。条件は変更される場合があるため、申請時には公式の最新情報をご確認ください。
