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不動産CRMとは?反響から契約まで業務に合う機能と選び方・導入手順を解説

CRM
不動産CRMの選び方と導入手順。上から下へ進む4段の流れ図。

複数の不動産ポータルサイトから届く反響メールを、営業担当者がExcelの顧客台帳へ1件ずつ転記している。追客の電話をかけた日や内見の感想は各自の手帳やスマートフォンに残っているため、担当者が休んだ日に顧客から連絡が来ても、店舗の誰も経緯を答えられない。そんな状況ではありませんか。

顧客情報が散らばる原因は、反響・追客・来店・契約の段階ごとに記録の置き場所が分かれていることです。この記事では、不動産会社の顧客管理の課題をふまえて不動産CRMに必要な機能と選び方、導入手順と費用の実例を解説します。記事を読めば、自社に必要な機能と候補を絞る条件がわかります。

不動産CRMは機能の多さで比べるより、改善したい業務を先に1つ決めてその業務を現場で試せる製品を選ぶ方が、導入後に使われない失敗を防ぐ近道です。

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不動産CRMとは反響から契約後までの顧客情報と対応履歴をまとめて管理する仕組み

CRMは「Customer Relationship Management」の略で、顧客との関係を管理する考え方と、そのためのシステムを指します。不動産CRMは、不動産会社の業務に合わせて作られた顧客管理システムです。

不動産会社の営業は、物件広告を見た顧客からの問い合わせ(反響)を起点に進みます。反響のあとは、メールや電話で連絡を続けて来店や内見につなげる追客に移り、接客・物件の案内・申し込み・契約・契約後のフォローへと続きます。不動産CRMは、反響から契約後までの流れで発生する顧客情報と対応履歴を1か所に集め、担当者以外も同じ情報を見られる状態にするための仕組みです。

一般的なCRMとの違いは、不動産業の業務に合わせた機能を最初から備えていることにあります。ポータルサイトからの反響の取り込み、希望条件に合う物件の提案、内見の予約管理などが代表例です。物件情報を管理する物件管理システムとは役割が異なり、不動産CRMが主に扱うのは「人」の情報と、その人とのやり取りの記録です。

不動産会社の顧客管理でよくある課題とCRMで解決できること

不動産会社の顧客管理の課題は、反響から契約後までの各段階に分かれて現れます。どの段階で情報が途切れているかを把握すると、CRMで何を解決したいのかがはっきりします。不動産会社の顧客管理でよくある課題は、以下の5つです。

  • 複数のポータルサイトから届く反響の転記に時間がかかる
  • 追客の期限と内容が担当者の記憶に頼っている
  • 来店や内見の記録が営業担当者ごとに分かれている
  • 契約後の顧客との接点が途切れる
  • 担当者の異動や退職で顧客の経緯がわからなくなる

複数のポータルサイトから届く反響の転記に時間がかかる

不動産会社は、複数のポータルサイトや自社ホームページに物件を掲載して反響を集めます。顧客は複数のサイトで気になる物件をまとめて問い合わせられるため、同じ顧客から別々のサイト経由で問い合わせが届くことも珍しくありません。

反響メールを手作業で顧客台帳に転記していると、件数が増えるほど入力に時間を取られます。転記が終わるまで初回の返信を始められないことも、顧客がほかの会社の案内を先に受け取る原因です。

不動産CRMの反響取り込み機能を使うと、ポータルサイトから届いた問い合わせ内容が顧客情報として自動で登録されます。転記の手間がなくなる分、営業担当者は初回の返信に早く取りかかれます。

追客の期限と内容が担当者の記憶に頼っている

追客は、反響のあとに顧客と連絡を取り続け、来店や内見につなげる営業活動です。住まい探しは検討期間が顧客ごとに大きく異なり、すぐに決める人もいれば、時間をかけて比べる人もいます。

次にいつ、誰に、何を連絡するかを担当者の記憶やメモで管理していると、忙しい時期ほど連絡漏れが起こります。連絡漏れの代償は、条件に合う物件が出たときに顧客が他社へ問い合わせることです。

不動産CRMでは、顧客ごとに次回の連絡予定をタスクとして登録できます。期限が近づくと担当者に通知されるため、連絡漏れを仕組みで防げます。

来店や内見の記録が営業担当者ごとに分かれている

来店時のヒアリング内容や内見後の感想は、次の提案の材料になる情報です。営業担当者ごとに手帳や個人のファイルで管理していると、店長や他の担当者が状況を確認できません。

情報が共有されていない店舗では、担当者が不在の日に顧客から問い合わせがあっても、ほかの担当者は答えに詰まります。顧客が同じ説明を何度も繰り返す状況は、会社への信頼を下げる要因です。

不動産CRMに来店や内見の記録を残すと、店舗の全員が同じ顧客の経緯を確認できます。担当者が不在の日でも、ほかの担当者が過去のやり取りを踏まえて対応できます。

契約後の顧客との接点が途切れる

契約や引き渡しが終わると、担当者は次の顧客の対応に移ります。契約した顧客の情報が書類の中だけに残ると、その後の連絡のきっかけをつかめません。

不動産の取引は頻繁に起こるものではないものの、住み替え・売却・知人の紹介など、契約後に次の相談が生まれる場面はあります。契約後の顧客との接点は、新しい反響を待つだけでは得られない相談の入り口です。

不動産CRMで契約後の顧客も同じ台帳に残しておけば、契約日や物件の情報をもとに連絡の時期を決められます。賃貸であれば更新の時期、売買であれば住み替えの検討時期などが連絡のきっかけです。

担当者の異動や退職で顧客の経緯がわからなくなる

顧客との関係が担当者個人に結びついていると、異動や退職のたびに引き継ぎで情報が抜け落ちます。営業のやり方や顧客の情報が特定の人にしかわからない状態は、属人化と呼ばれます。引き継ぎの資料づくりには時間がかかり、口頭で伝えた内容は記録に残りません。

後任の担当者は、顧客がどの物件を見て何を気にしていたのかを知らないまま連絡することになります。不動産CRMに対応履歴を残す運用が定着していれば、担当者が代わっても後任が経緯を確認できます。成約までの対応の記録は、経験の浅い担当者にとって先輩の進め方を学ぶ教材です。

不動産CRMとExcelのどちらで顧客管理をするかを見分ける目安

顧客管理を始めるときに、まずExcelなどの表計算ソフトで台帳を作る会社は少なくありません。表計算ソフトでも顧客の一覧は作れるため、CRMが必要かどうかは会社の状況によって変わります。

判断の分かれ目は、対応の履歴・担当者・次回の期限の3つを今の方法で無理なく管理できているかどうかです。表計算ソフトで管理しにくくなるのは、次のような状態です。

  • 1人の顧客に対して複数回のやり取りを時系列で残したい
  • 複数の担当者が同じ台帳を同時に更新する
  • 次回の連絡予定の期限を通知してほしい
  • 外出先からスマートフォンで記録を確認したい
  • 反響の件数が増えて転記が追いつかない

上記に当てはまる項目が多いほど、表計算ソフトでの管理は担当者の手間と記憶に頼る部分が大きくなります。反対に、担当者が1人か2人で反響の件数も少ない店舗では、表計算ソフトで項目を整えるだけで足りる場合もあります。

CRMの検討を始める前に今の台帳で困っている場面を書き出しておくことが、導入の目的を決める材料です。困っている場面が「転記の手間」なのか「連絡漏れ」なのかによって、優先して確かめる機能が変わります。

不動産CRMに必要な機能を業務の流れ別に整理

不動産CRMの機能は製品によって幅があり、すべてを使う必要はありません。業務の流れに沿って機能を整理しておくと、自社に必要な機能と不要な機能を区別しやすくなります。業務の流れ別に見た不動産CRMの主な機能は、以下のとおりです。

  • 反響を取り込んで担当者に割り振る機能
  • 追客の予定と連絡を管理する機能
  • 希望条件に合う物件を提案する機能
  • 来店と内見の予約を管理する機能
  • 案件の進捗と契約を管理する機能
  • 反響と成約を分析する機能
  • スマートフォンから操作できる機能

反響を取り込んで担当者に割り振る機能

反響の取り込み機能は、ポータルサイトや自社ホームページに届いた問い合わせを、顧客情報として自動で登録する機能です。氏名・連絡先・問い合わせた物件・希望条件が顧客ごとにまとまります。取り込んだ反響を担当者に割り振る機能を備えた製品もあります。

割り振りと同時に担当者へ通知が届く仕組みは、初回の返信を早めるための工夫です。問い合わせへの自動返信メールを設定できる製品であれば、営業時間外の反響にも受け付けの連絡を返せます。

同じ顧客が別のサイトから再び問い合わせた場合に、既存の顧客情報と結びつけられるかどうかも確認したい項目です。重複した登録が増えると、担当者が気づかないまま同じ顧客に別々の連絡を送ることになります。

追客の予定と連絡を管理する機能

追客の管理機能は、顧客ごとに次回の連絡予定と過去の連絡内容を記録する機能です。期限が近づいた連絡予定を一覧で確認でき、担当者の連絡漏れを防ぎます。

連絡手段の面では、メールに加えてLINEやSMS(携帯電話番号あてのショートメッセージ)を管理画面から送受信できる製品があります。顧客が普段使う連絡手段でやり取りでき、送った内容が顧客の履歴に残る仕組みです。

配信の自動化に関わる機能には、次のようなものがあります。

  • 登録した順番と間隔で複数のメールを送るシナリオメール(ステップメール)
  • 送ったメールを顧客が開いたときの開封通知
  • 新着物件が希望条件に合ったときの自動配信

開封通知は、顧客が物件の案内を見たタイミングで電話をかけるといった使い方ができます。どの機能を使う場合でも、配信する文面と送る相手の条件を決めるのは自社です。

希望条件に合う物件を提案する機能

物件の提案機能は、顧客の希望条件と物件情報を照らし合わせ、条件に合う物件を顧客に案内する機能です。エリア・間取り・賃料や価格の上限などの条件を顧客ごとに登録しておくと、条件に合う新着物件を探す手間が減ります。

顧客専用のWebページ(マイページ)で提案した物件を閲覧してもらえる製品もあります。顧客がどの物件を見たかは、次の連絡で話題にする物件を絞る手がかりです。

物件の提案機能を使うには、物件情報がCRMから参照できる状態になっている必要があります。自社で使っている物件管理システムと同じ会社の製品か、物件情報を取り込める仕組みがあるかは、導入前に確かめる項目です。

来店と内見の予約を管理する機能

来店と内見の予約管理は、顧客との日程調整と店舗のスケジュールをまとめて扱う機能です。予約の受け付けをWebで行える製品であれば、電話でのやり取りを減らせます。予約の情報が顧客の履歴とつながっていると、来店時にそれまでの問い合わせ内容を確認したうえで接客を始められます。

オンラインでの接客や内見に対応した製品は、遠方の顧客との打ち合わせに役立つ選択肢です。来店時のアンケートを入力できる製品では、ヒアリングの内容をそのまま顧客情報に残せます。紙のアンケートを転記する作業がなくなり、記入内容を次の提案に生かしやすくなります。

案件の進捗と契約を管理する機能

案件の進捗管理は、顧客ごとに「反響」「来店」「内見」「申し込み」「契約」といった段階を記録する機能です。店舗全体で見ると、どの段階に何人の顧客がいるかを一覧で把握できます。

段階ごとの人数がわかると、店長は来店が少ないのか、申し込みから契約に進まないのかといった詰まりの位置を判断できます。担当者ごとの案件数は、忙しさの偏りを調整する材料です。

契約に関する書類や日付を管理できる製品もあります。賃貸の契約期間や更新日、売買の決済日や引き渡し日は、契約後の連絡の時期を決める手がかりになる情報です。

反響と成約を分析する機能

分析機能は、蓄積した顧客情報と対応履歴を集計し、営業の改善点を見つける機能です。反響の件数をポータルサイトごとに比べたり、反響から来店、来店から契約に進んだ割合を確かめたりできます。

どの媒体からの反響が契約につながりやすいかがわかれば、広告費を配分する判断に使えます。追客の内容と成約の関係は、成果を上げている担当者の進め方を店舗で共有するきっかけになるデータです。

分析の精度は、日々の入力の正確さで決まります。入力の漏れが多い状態では数字が実態とずれるため、分析機能を生かすには入力のルールを先に決めておく必要があります。

スマートフォンから操作できる機能

不動産の営業は、内見の案内や物件の確認で外出する時間が長い仕事です。スマートフォンから顧客情報を確認し、対応履歴を入力できると、店舗に戻ってからまとめて記録する手間がかかりません。

内見の直後に感想を記録できれば、記憶が新しいうちに正確な情報を残せます。外出先で反響の通知を受け取り、その場で初回の返信を送れることも、スマートフォン対応の利点です。

スマートフォン版で使える機能がパソコン版と同じかどうかは、製品によって異なります。外出先で使いたい操作を事前に書き出し、スマートフォン版で実際に試してから判断しましょう。

賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理で重視する不動産CRMの機能の違い

不動産CRMには、賃貸仲介向け・売買仲介向け・両方に対応したものがあります。同じ不動産業でも、扱う取引によって顧客の検討期間や必要な情報が異なるため、重視する機能も変わります。業務の種類別に重視する機能の違いは、以下のとおりです。

  • 賃貸仲介では反響への素早い対応を重視する
  • 売買仲介の買主対応では長期の追客を重視する
  • 売買仲介の売主対応では査定後の継続した連絡を重視する
  • 賃貸管理ではオーナーと入居者の対応履歴を重視する

業務の種類ごとの違いをまとめると、以下の表のとおりです。

業務の種類 顧客の状況 重視する機能
賃貸仲介 複数の物件をまとめて問い合わせる顧客が多い 反響の取り込みと割り振り、自動返信、物件の提案
売買仲介(買主) 検討期間が長く、条件が途中で変わることがある 追客の予定管理、条件変更の記録、新着物件の配信
売買仲介(売主) 査定から売却の判断までに時間がかかることがある 査定後の連絡の管理、案件の進捗管理
賃貸管理 オーナーと入居者の両方とやり取りが続く 対応履歴の共有、更新や解約の時期の管理

賃貸仲介では反響への素早い対応を重視する

賃貸仲介の顧客は、複数のポータルサイトで物件を比べ、気になる物件をまとめて問い合わせることができます。複数の会社に同時に問い合わせている顧客にとって、最初に届く返信は会社を比べる材料の一つです。

賃貸仲介で不動産CRMを選ぶときは、反響を取り込んでから担当者が返信するまでの操作の短さを重視します。自社が掲載しているポータルサイトからの取り込みに対応しているか、自動返信の文面を物件ごとに変えられるかが確認の対象です。

反響の件数が多い店舗では、反響の割り振りと担当者ごとの対応状況を一覧で見られる機能も役立ちます。店長が返信の遅れている反響に気づける仕組みがあると、取りこぼしを減らせます。

売買仲介の買主対応では長期の追客を重視する

住宅の購入を考える顧客は、資金計画や家族との相談を経て物件を決めるため、検討期間が長くなりがちです。希望のエリアや予算も、物件を見ていくうちに変わることがあります。

売買仲介の買主対応では、長い期間にわたって連絡を続けるための追客の管理機能を重視します。希望条件の変更を履歴として残せるか、条件に合う新着物件を自動で案内できるかが、確かめたい機能です。

検討の段階が顧客ごとに異なるため、購入の時期が近い顧客を見分けられる機能も役立ちます。メールの開封や物件ページの閲覧の記録を確認できる製品であれば、連絡の優先順位を決める材料にできます。

売買仲介の売主対応では査定後の継続した連絡を重視する

売却を考える顧客は、査定を依頼してから実際に売却を決めるまでに時間がかかることがあります。査定の結果を伝えたあとに連絡が途絶えると、売却を決めた時点で他社に依頼される可能性があります。

売主対応で重視するのは、査定の依頼日・査定の結果・次に連絡する時期を顧客ごとに管理できる機能です。売却の相談がどの段階にあるかを案件として管理できると、店舗全体で見込みを把握できます。

売主と買主の両方を同じ会社で扱う場合は、1つのCRMで両方の顧客を管理できるかも確認します。売主の物件に合う買主を探すといった使い方をするには、両方の情報が同じ仕組みの中にあることが前提です。

賃貸管理ではオーナーと入居者の対応履歴を重視する

賃貸管理の業務では、物件を所有するオーナーと、住んでいる入居者の両方とやり取りが続きます。修繕の依頼・更新や解約の手続き・家賃に関する連絡など、問い合わせの種類も多岐にわたります。

賃貸管理で重視するのは、オーナーと入居者のそれぞれについて、誰がいつどのような対応をしたかを担当者全員が確認できる機能です。問い合わせの窓口が複数の担当者に分かれていても、履歴が1か所にあれば対応の重複や漏れを防げます。

賃貸管理の業務は、物件の情報や契約の情報と結びつく場面が多くあります。入居者やオーナーの情報を物件管理システム側で持つのか、CRM側で持つのかを先に決めておくことが、同じ情報の二重入力を避ける条件です。

自社に合う不動産CRMの選び方

不動産CRMは、多機能な製品を選べば成果が出るわけではありません。現場で使われない機能に費用を払い続けることになるため、選ぶ基準を先に決めておく必要があります。自社に合う不動産CRMの選び方は、次の7つです。

  • 自社で改善したい業務を先に決める
  • 利用しているポータルサイトとの連携範囲を確認する
  • 顧客が使う連絡手段に対応しているかを確認する
  • 現場の営業担当者が入力しやすいかを試す
  • 不動産業向けの製品と汎用のCRMのどちらが合うかを比べる
  • 権限設定と個人情報の管理機能を確認する
  • 導入後の支援体制を確認する

自社で改善したい業務を先に決める

不動産CRMを選ぶ最初の手順は、どの業務を改善したいのかを決めることです。反響の転記を減らしたいのか、追客の漏れを防ぎたいのか、複数の店舗で顧客情報を共有したいのかによって、必要な機能は変わります。

改善したい業務が決まっていないと、製品の説明を聞くたびに便利そうな機能に目が向き、比較の基準がぶれます。現在の業務で困っている場面を書き出して優先する順に並べた一覧が、候補の製品を同じ基準で比べる物差しです。

改善したい業務は、最初から多くを望まず1つか2つに絞るのが現実的な進め方です。導入後に使いこなせてから次の業務に広げる方が、現場の負担を抑えられます。

利用しているポータルサイトとの連携範囲を確認する

反響の取り込みは、不動産CRMの導入効果を実感しやすい機能の一つです。ただし、取り込みに対応しているポータルサイトの範囲は製品によって異なります。自社が物件を掲載しているポータルサイトをすべて書き出し、候補の製品がそれぞれに対応しているかを確認しましょう。

自社ホームページの問い合わせフォームからの反響も取り込めるかどうかは、見落としやすい確認項目です。取り込める項目の範囲も確かめておきます。問い合わせた物件の情報や顧客の希望条件まで取り込めるのか、氏名と連絡先だけなのかで、担当者が手で補う作業の量が変わります。

連携の方式や設定の詳細は、製品の提供会社に確認する事項です。

顧客が使う連絡手段に対応しているかを確認する

顧客との連絡手段は、メールだけでなく電話・LINE・SMSと広がっています。自社の顧客がどの連絡手段を使っているかによって、CRMに求める機能は異なります。

LINEで顧客とやり取りしている店舗であれば、LINEの送受信を管理画面で扱えるか、やり取りが顧客の履歴として残るかが確認の対象です。担当者の個人のスマートフォンでやり取りしている状態は、退職時に履歴が会社に残らない原因になります。

メールの配信機能を使う場合は、一斉配信やシナリオメールの設定のしやすさも比べます。物件の案内のような広告や宣伝を含むメールは、特定電子メール法のルールに沿って送ることが前提です。

現場の営業担当者が入力しやすいかを試す

不動産CRMの成果は、営業担当者が日々の対応を入力し続けるかどうかで決まります。入力の操作が煩雑な製品は、導入しても記録が残らず、台帳がまた別の場所に分散します。

操作性は、製品の説明を受けた担当者だけでなく、実際に反響の対応や内見の記録を行う担当者が試すのが確実な方法です。内見から戻った直後に1件の記録を入力するまでの操作を、スマートフォンとパソコンの両方で試すと、現場で使えるかを判断しやすくなります。

無料のお試し期間やデモ環境は、契約前に操作性を確かめる機会です。お試し期間のうちに普段の業務で発生する作業を一通り試しておくと、契約後に必要な操作ができないと気づく事態を避けられます。

不動産業向けの製品と汎用のCRMのどちらが合うかを比べる

CRMには、不動産業向けに作られた製品と、業種を問わず使える汎用のCRMがあります。選ぶ基準は、どちらが優れているかではなく、自社の業務と体制に合うかどうかです。不動産業向けの製品と汎用のCRMの違いは、以下の表のとおりです。

比べる観点 不動産業向けの製品 汎用のCRM
不動産業務の機能 反響の取り込みや物件の提案などを最初から備えている 不動産業務に合わせた項目や画面を自社で設定する
設定の自由度 用意された画面や項目の範囲で使う 項目や画面を自社の業務に合わせて作り込める
他部門での活用 主に不動産の営業部門で使う 営業以外の部門の顧客管理にも広げやすい

ポータルサイトからの反響が営業の中心にある会社では、反響の取り込みを備えた不動産業向けの製品の方が、設定の手間をかけずに使い始められます。法人顧客との取引や不動産以外の事業もある会社では、汎用のCRMで全社の顧客情報をまとめる選択肢も考えられます。

権限設定と個人情報の管理機能を確認する

不動産CRMには、顧客の氏名・住所・連絡先・勤務先・年収といった個人情報が集まります。担当者全員がすべての情報を見られる状態は、情報が漏れたときの影響を大きくする原因です。

権限設定の機能では、店舗や役職ごとに閲覧や編集の範囲を分けられるかを確認します。退職した担当者のアカウントをすぐに停止できるか、誰がいつどの情報を見たかの記録(操作ログ)を残せるかも比べたい項目です。

個人情報保護法は、個人データの漏えいや滅失を防ぐために必要かつ適切な措置(安全管理措置)を講じることを事業者に求めています。CRMの権限設定や操作ログの機能は、自社で講じる措置の一部を支える道具として位置づけられます。

導入後の支援体制を確認する

不動産CRMは、導入した直後よりも、現場で使い続ける段階で問題が出やすいシステムです。操作がわからない担当者が入力をやめると、台帳の情報がすぐに古くなります。

支援体制を確認するときは、導入時の初期設定を手伝ってもらえるか、操作の研修があるか、問い合わせ窓口の対応時間はいつかを比べます。不動産業の実務を知っている担当者が支援してくれるかどうかも、相談のしやすさに関わる要素です。

支援の内容によっては、月額の利用料とは別に費用がかかる場合があります。見積もりを取るときは、支援の範囲と料金を合わせて確認しておきましょう。

不動産CRMの導入手順

不動産CRMの導入は、製品を契約して終わりではありません。現場の業務に組み込み、担当者が入力を続ける状態を作るまでが導入の範囲です。不動産CRMを導入する手順は、以下の5つです。

  1. 導入の目的と対象の業務を決める
  2. 必須の条件をまとめて候補を絞る
  3. お試し期間で実際の業務を試す
  4. 少人数で試験運用してから対象を広げる
  5. 入力のルールを決めて定着させる

導入の目的と対象の業務を決める

最初に、不動産CRMで何を改善したいのかを、社内で言葉にしてそろえます。目的が「反響への初回返信を早くする」なのか「追客の漏れをなくす」なのかによって、最初に使う機能と評価の方法が変わります。

目的と合わせて決めておきたいのが、導入後に何が変われば成功と判断するかの基準です。反響から初回の返信までの時間、追客の予定どおりに連絡できた割合など、今の状態と比べられる指標を選びます。

対象の業務と店舗の範囲も、この段階で決めておきます。全店舗で一斉に始めるより、1つの店舗や1つの業務から始める方が、問題が出たときに修正しやすい進め方です。

必須の条件をまとめて候補を絞る

目的が決まったら、製品に求める条件を「必須」と「あれば便利」に分けて書き出します。必須の条件を満たさない製品を最初に外すと、比べる製品の数を絞れます。必須の条件として書き出す項目の例は、以下のとおりです。

  • 取り込みが必要なポータルサイトの名前
  • 使いたい連絡手段(メール・LINE・SMS)
  • 利用する担当者の人数と店舗の数
  • 一緒に使う物件管理システムや会計ソフト
  • 予算の上限(初期費用と月額費用)

条件を書いた一覧を候補の製品の提供会社に渡すと、対応の可否を同じ形で確認できます。一緒に使うシステムとの連携の方法は、製品ごとに違いが大きい項目です。

お試し期間で実際の業務を試す

候補をいくつかに絞ったら、お試し期間やデモ環境で実際の業務を試します。製品の説明資料だけでは、自社の業務で使えるかどうかを判断できません。お試し期間で確かめる作業は、以下のとおりです。

  1. 実際の反響を取り込み、担当者に割り振る
  2. 割り振られた担当者が初回の返信を送る
  3. 次回の連絡予定を登録し、通知を受け取る
  4. 内見のあとにスマートフォンから記録を入力する
  5. 店長が案件の一覧と進捗を確認する

上記の作業は、実際に業務を行う担当者が試すことが大切です。管理する立場の人だけで評価すると、現場で入力が続かない製品を選ぶ原因になります。

少人数で試験運用してから対象を広げる

製品を決めたら、少人数の担当者や1つの店舗で試験運用を始めます。試験運用の目的は、入力の項目や手順が現場に合っているかを確かめ、本格的に使い始める前に修正することです。

過去の顧客情報をすべて移す作業は、試験運用の段階では急がなくて構いません。対応中の顧客から登録を始めると、移行の手間をかけずに新しい仕組みに慣れられます。

試験運用で出た意見をもとに、入力の項目や画面の並びを調整します。使いにくい点を残したまま対象を広げることは、全店舗に同じ不満を広げる原因です。調整が済んでから、ほかの担当者や店舗に広げていきます。

入力のルールを決めて定着させる

不動産CRMを使い続けるには、何を、いつまでに、どこへ入力するかのルールが必要です。ルールがないと、担当者によって入力する内容がばらつき、店舗全体での比較や分析ができなくなります。入力のルールとして決めておく内容の例は、以下のとおりです。

  • 反響を受けてから初回の返信を記録するまでの期限
  • 来店や内見のあとに入力する項目
  • 顧客の段階(反響・来店・内見・申し込み・契約)を変える条件
  • 個人のスマートフォンで顧客とやり取りしない決まり

ルールを決めたら、店長が定期的に入力の状況を確認し、記録が止まっている担当者に声をかける仕組みを作ります。入力された情報を会議や引き継ぎで実際に使う場面を増やすと、担当者が入力する意味を実感しやすくなります。

不動産CRMで顧客情報を扱うときに守る法律

不動産CRMには多くの個人情報が集まり、追客の連絡にもCRMの機能を使います。システムを入れるだけで法律の義務を満たせるわけではないため、運用のルールとあわせて確認しておく必要があります。不動産CRMの運用で関わる主な法律は、以下の3つです。

  • 個人情報保護法で求められる顧客情報の管理
  • 特定電子メール法で定められた物件案内メールのルール
  • 宅地建物取引業法で認められた契約書面の電子化

個人情報保護法で求められる顧客情報の管理

個人情報保護法は、個人情報を取り扱う事業者に対して、取り扱いのルールを定めています。不動産CRMに登録する顧客の氏名や連絡先、希望条件も、このルールに沿って扱う対象です。個人情報保護法で事業者に求められている主な義務は、以下のとおりです。

  • 利用目的をできる限り特定し、本人へ通知または公表する
  • 個人データを正確かつ最新の内容に保ち、不要になったら遅滞なく消去するよう努める
  • 漏えいや滅失を防ぐための安全管理措置を講じる
  • 従業者と委託先を監督する
  • 本人の同意を得ずに個人データを第三者へ提供しない
  • 権利利益を害するおそれが大きい漏えい等が起きたら個人情報保護委員会へ報告し本人に通知する

安全管理措置は、組織的・人的・物理的・技術的の4つの面から講じる措置で構成されます。CRMの権限設定や操作ログは技術的な措置の道具になる一方、担当者への教育や取り扱いのルールづくりは別に整える必要があります。

顧客情報を提携する引越し会社やリフォーム会社に渡す場合は、第三者への提供にあたるかどうかの確認が欠かせません。第三者提供の制限には法令に基づく場合などの例外があるものの、原則として本人の同意が必要です。CRMの導入や運用を外部の会社に任せて顧客データの取り扱いを委託する場合は、委託先が安全に管理しているかを監督する義務も生じます。

特定電子メール法で定められた物件案内メールのルール

新着物件の案内やキャンペーンの告知のように、広告や宣伝を目的とするメールは、特定電子メール法の対象です。携帯電話番号あてに送るSMSも対象に含まれるため、CRMのSMS機能で物件を案内する場合も同じルールが適用されます。

特定電子メール法では、原則としてあらかじめ同意した相手にだけ広告宣伝メールを送れます。同意した相手にだけ送る方式は、オプトイン方式と呼ばれる仕組みです。取引関係にある相手や、名刺などの書面で自分のメールアドレスを知らせてきた相手に送る場合などには、同意がなくても送れる例外があります。

不動産CRMで広告宣伝メールを送るときに押さえておく主なルールは、以下のとおりです。

  • 反響フォームや来店時のアンケートで配信の同意を取る
  • 同意を受けた時期や方法などの記録を保存する
  • 送信者の氏名または名称と受信拒否の連絡先をメールに表示する
  • 受信拒否の通知を受けた相手には以後送らない

同意の記録の保存期間は、その記録に関わる広告宣伝メールを最後に送った日から1か月です。特定電子メール法に基づく措置命令を受けた場合は、保存期間が1年間に延びます。CRMで配信の同意の有無を顧客ごとに管理しておくと、同意のない相手へ誤って送るのを防げます。

宅地建物取引業法で認められた契約書面の電子化

令和4年5月18日から、宅地建物取引業法に基づいて交付する書面を、紙に代えて電磁的方法で提供できるようになりました。対象は、媒介契約の書面(第34条の2)、重要事項説明書(第35条)、契約締結時の書面(第37条)です。

書面を電子化するには、説明の相手方などに意向を確認し、承諾を得る必要があります。不動産CRMで契約の段階まで管理する場合は、顧客ごとに書面の電子化の承諾を得たかどうかを記録しておくと、手続きの漏れを防げます。

ITを活用した重要事項説明(IT重説)も、オンラインでの接客と組み合わせて使える方法です。電子契約のサービスとCRMをつなぐ方法は製品ごとに異なるため、契約の管理までCRMで行いたい場合は、導入前に提供会社へ対応の範囲を確認しましょう。

不動産CRMの費用の実例

不動産CRMの費用は、製品の種類と料金の単位によって大きく異なります。不動産CRMの候補になる製品の料金の実例は、以下の表のとおりです。

製品名 製品の種類 料金(税抜)
みらいえ 顧客システム 不動産業向けの顧客管理 1店舗につき初期費用5万円、月額3万円
みらいえ 賃貸システム/売買システム 不動産業向けの物件管理 1店舗につき初期費用5万円、月額は賃貸2万円・売買4万円
kintone 業務アプリの作成ツール 1ユーザー月額1,000円(ライトコース)・1,800円(スタンダードコース)、最小10ユーザーから
Salesforce Sales Cloud 汎用のCRM 年間契約で1ユーザー月額3,000円(Starter Suite)・12,000円(Pro Suite)

表の実例では、不動産業向けの製品が1店舗あたりの料金、業務アプリの作成ツールと汎用のCRMが1ユーザーあたりの料金です。店舗単位の料金は店舗の数に応じて、利用者単位の料金は利用する人数に応じて金額が増えます。kintoneは最小10ユーザーからの契約のため、スタンダードコースを利用する場合の月額は18,000円(税抜)からになります。

表に示した金額は、製品の利用料の一部にすぎません。実際の負担を比べるときは、初期費用と月額費用に加えて、過去データの移行・ポータルサイトとの連携の設定・追加の機能・導入時の支援の費用と社内の作業時間まで含めた総額で見ることが大切です。表示された月額だけで比べると、契約後に移行や設定の費用が加わり、予算を超えるおそれがあります。汎用のCRMでは、不動産業務に合わせた項目や画面の設定に費用や時間がかかる場合があります。

不動産CRMは反響から契約までの業務の流れに合わせて選びましょう

不動産CRMは、反響・追客・来店・内見・契約・契約後のフォローまでの顧客情報と対応履歴を1か所に集め、担当者以外も同じ情報を見られるようにする仕組みです。機能の多さではなく、自社の業務のどこで情報が途切れているかを起点に選ぶと、導入後に使われないシステムを避けられます。不動産CRMを選んで導入するまでに押さえる点は、以下のとおりです。

  • 改善したい業務を1つか2つに絞る
  • 自社の業務の種類(賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理)に合う機能を確かめる
  • 掲載しているポータルサイトとの連携範囲と連絡手段を確認する
  • 実際に業務を行う担当者がお試し期間で操作する
  • 少人数の試験運用で入力のルールを固めてから対象を広げる
  • 個人情報保護法と特定電子メール法に沿った運用ルールを整える

費用は表示された月額だけでなく、移行・設定・支援まで含めた総額で比べると、契約後に想定外の負担が出にくくなります。自社の業務に合う不動産CRMを選べば、反響の取りこぼしや追客の漏れを担当者の注意力ではなく仕組みで防げます。

まずは今の顧客台帳で困っている場面を書き出し、改善したい業務を店舗の担当者と一緒に決めるところから始めましょう。

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