
クラウドファンディングの費用を手数料率だけで見積もると、収支が合わなくなります。支援金は売上ではありません。そこからプラットフォーム手数料に加えて、リターンの原価、送料と梱包、ページ制作、事前集客の広告費が引かれます。先に費用の側を置いてから、目標金額と価格を決める順番にします。
プラットフォーム手数料は「成立したら」かかる
まず、掲載そのものにかかる費用です。CAMPFIRE の公式ヘルプには、プロジェクトが成立した場合に、集まった支援総額に対する料率に消費税を加えた額を支払うと記載されています。成立の条件は「All-or-Nothing 方式で目標金額を達成、もしくは All-in 方式で支援金が1円以上」です。
2026年9月25日時点で公表されている料率は、サービスごとに分かれています。
| サービス | 利用手数料(別途消費税) | 決済手数料(別途消費税) |
|---|---|---|
| CAMPFIRE | 12% | 5% |
| machi-ya | 20% | 5% |
| CAMPFIRE Community | 15% | なし |
※ 同ヘルプには、プロジェクトオーナーとの間に料率について別途合意がある場合はその合意が優先されること、手数料を減額するキャンペーンが実施される場合があることも併記されています。料率はプラットフォームとサービスによって異なり、変更もされます。見積もりを作るときは、利用するプラットフォームの公式案内で実施時点の条件を確認してください。上の表は CAMPFIRE が公表している料率の例であり、プラットフォームの優劣を示すものではありません。
混同しやすいのが、支援者が負担する費用との区別です。CAMPFIRE の公式ヘルプでは、支援者が支払うシステム利用料を「支援金額が1万円未満の場合:228円+消費税22円/支援金額が1万円以上の場合:支援金額の2.27%+消費税」としています。これは支援者側の負担で、実行者が支払う手数料とは別のものです。両方を足して自社の負担だと考えると、収支の見積もりがずれます。
出典:CAMPFIRE ヘルプ「CAMPFIRE掲載時の手数料」/同「システム利用料(支援者様ご負担の手数料)について」(いずれも2026年9月25日確認。条件は変更されることがあります)
支援金から引かれていくもの
手元に残る金額は、次の項目を引いた後の額です。
- プラットフォーム手数料・決済手数料 — 成立した支援総額に対してかかります
- リターンの原価 — 商品そのものの製造原価。試作の費用とは別に計算します
- 送料と梱包費 — 発送先の地域と個数で変わります。緩衝材や外箱も含みます
- ページ制作と撮影 — 写真・動画・文章。外注する場合は事前に確定します
- 事前集客の広告費 — 公開日に人が来る状態を作るための費用
- サポート対応の工数 — 質問への返信、配送遅延の連絡、交換対応
- 一般販売への移行準備 — 検証後に販売を続けるなら、ここも同じ予算の中で見ます
このうち手数料以外は、支援が集まらなくても発生するものが多くあります。制作費と広告費は公開前に確定するためです。「不成立なら手数料はかからない」ことと「費用がゼロで済む」ことは同じではありません。
値引きリターンは、そのまま粗利を削る
早期割引や個数限定の割引は、集客の手段であると同時に実質的な値下げです。粗利の計算には、定価ではなく割引後の実売価格を使います。
当社が Makuake で実施した「MANOS チキンカレー」では、リターンの一つを「早割 15%OFF 300名様/5食セット 4,675円(税込)」として設定していました。この場合、1件あたりの粗利は次の式で出します。
1件あたり粗利 = 割引後の実売価格 −(商品原価 + 送料・梱包 + 手数料)
リターンの価格設定には、プラットフォーム側の条件もあります。CAMPFIRE の公式ヘルプでは「500円以上から設定可能」「送料・消費税込みの価格を設定しましょう」と案内されています。送料を価格に含める前提だと、遠方や大型の商品ほど粗利が薄くなります。地域別の送料を数パターン置いて、最も不利なケースでも成立するかを確認してください。
「一般販売予定価格より安い」と書くときの注意
割引の見せ方にはルールがあります。CAMPFIRE の公式ヘルプは、市販予定のある商品をリターンにする場合について「将来の販売価格と比較してリターンが低価格であることを記載する場合は、景品表示法により合理的かつ確実に実施される販売計画がなければならない」と案内しています。
根拠となる消費者庁の執行方針も公開されています。将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示について、「比較対照価格とされた将来の販売価格で販売することが確かな場合以外においては、基本的に行うべきではない」とされています。
実務上の意味は単純です。「一般販売予定価格◯◯円のところ、今なら△%OFF」と書くなら、その一般販売価格で実際に売る計画が先に必要になります。検証で価格を決めるつもりなのに将来価格を先に打ち出す、という順序は成立しません。割引の見せ方を決める前に、一般販売の価格方針を決めておいてください。
出典:CAMPFIRE ヘルプ「リターンはいくらから設定できますか?」/同「市販予定のある商品をリターンに設定できますか?」/消費者庁「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」(令和2年12月25日・PDF)/Makuake「MANOSチキンカレー」プロジェクトページ(いずれも2026年9月25日確認)
費用を先に置くと、目標金額の意味が変わる
費用の合計が出ると、「何件売れたら費用を回収できるか」が計算できます。
損益分岐の件数 = 固定費(制作・撮影・広告) ÷ 1件あたり粗利
この件数と、量産の最低ロットを消化するのに必要な件数を並べると、目標金額をどこに置くべきかが決まります。先に目標金額を決めてから費用を積むと、達成しても赤字という状態が起こります。目標金額の決め方はクラウドファンディングの目標金額の決め方で扱っています。
手数料・原価・広告費・配送費を一覧で整理するための収支管理シートは、クラファン準備LABで無料配布しています。
見落としやすい3つ
- 配送の遅延対応 — 製造が遅れた場合、支援者への連絡と個別対応の工数が発生します
- 交換・再送 — 破損や不着の再送分を、あらかじめ数量に見ておきます
- 端数の在庫 — 最低ロットと支援件数は一致しません。余った分の保管費と、一般販売での消化計画が要ります
3つ目は検証そのものの結果には出ませんが、「量産前の在庫リスクを抑える」という目的に直接効く項目です。余剰をどう扱うかを決めておかないと、リスクを抑えるはずの検証で在庫が残ります。検証後の一般販売への引き継ぎはクラウドファンディングの後、一般販売へ何を引き継ぐかで扱っています。
この記事の数字について
- 記載した料率・金額は、2026年9月25日時点で CAMPFIRE の公式ヘルプに掲載されていた値です。条件は変更され、別途合意やキャンペーンによっても変わります。実施時点で公式ページを確認してください。
- 他のプラットフォームの料率は本記事では扱っていません。比較の目的で読まないでください
- 支援者が負担するシステム利用料と、実行者が負担するプラットフォーム手数料は別の費用です
- リターン価格の例は当社の1プロジェクトの設定値であり、他の商材の相場を示すものではありません
- クラウドファンディングの費用構造は一般販売と異なります。ここでの収支をそのまま一般販売の損益に当てはめることはできません
よくある質問
掲載するだけで費用はかかりますか。
プラットフォームによります。CAMPFIRE は、プロジェクトが成立した場合に支援総額に対する料率で手数料がかかると公式に案内しています。ただしページ制作費や事前集客の広告費は、成立の有無にかかわらず発生します。
実行者が払う手数料は何%ですか。
プラットフォームとサービスで異なります。CAMPFIRE は2026年9月25日時点で利用手数料12%・決済手数料5%(いずれも別途消費税)と公表していますが、別途合意やキャンペーンで変わる場合があると併記されています。利用予定のプラットフォームの公式案内で確認してください。
支援者が払う手数料と、実行者が払う手数料は同じものですか。
別のものです。CAMPFIRE の場合、支援者側には支援金額に応じたシステム利用料がかかると案内されています。実行者が負担する手数料はこれとは別に計算します。
リターンの価格に送料を含めるべきですか。
CAMPFIRE は「送料・消費税込みの価格を設定しましょう」と案内しています。含める前提なら、地域別の送料で最も不利なケースを置いて粗利を確認してください。
「一般販売より安い」と書いてもよいですか。
将来の販売価格を比較対照にする表示は、その価格で実際に販売することが確かな場合以外は基本的に行うべきでないとされています。一般販売の価格計画を先に固めてから、表示の仕方を決めてください。
広告費はどのくらい見ておけばよいですか。
商材と目標件数で変わるため、一律の目安は出せません。損益分岐の件数を先に計算し、その件数を集めるのに必要な費用として置くほうが判断に使えます。
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