COLUMN

Google Ad Grants とは。無償枠で実際にできること

広告運用
月10,000米ドルの枠を器で表した図。器の下部だけが埋まっており、下にキーワード・入札・広告とランディングページ・ターゲティングの4要因が並ぶ。

Google Ad Grants(アドグランツ)は、条件を満たした非営利団体に対して、Google 検索広告の枠が毎月 10,000 米ドル分まで無償で提供される制度です。NPO法人や一般社団法人などが対象で、Google for Nonprofits(非営利団体向けプログラム)の一部として提供されています。結論から言うと、これは「広告費が無料でもらえる」制度ではなく、「無償の在庫を使い切るための運用を、自分たちで続けられるか」を問われる制度です。枠は保証ではなく上限であり、要件を満たさなくなったアカウントは予告なく止まります。

何が無償になるのか

提供されるのは、Google.com に表示される検索広告の枠です。ディスプレイや動画は含まれず、追加の Google 広告が必要な場合は別アカウントで購入することになります。金額の上限は次のとおりです(2026年8月時点・公式ヘルプ)。

  • 月 10,000 米ドル・1日あたり約 329 米ドル — 米ドル以外の通貨のアカウントでは、おおよその相当額に換算されます(換算率は変動します)
  • キャンペーンが何本あっても1日 329 米ドル — 各キャンペーンの日予算の合計が 329 米ドルを超える設定自体はできますが、上限を超える資金援助は行われません

ここで最初に押さえるべきなのは、公式が「これは制限であり、費用の保証ではありません」と明記していることです。実際にいくら消化できるかは、入札単価・キーワードの競争力・広告の品質・ターゲティング・そのキーワードを検索する人の数で決まります。枠が 10,000 ドルあることと、10,000 ドル分の広告が出ることは別の話です。

枠を使い切れないのはなぜか

実際、多くのアカウントは日予算を使い切れません。公式が挙げている原因は4つです。

  • キーワードが具体的すぎる、または検索ボリュームが少ない
  • 入札単価の競争力が足りない(スマート自動入札を使っている場合も含む)
  • 広告の品質、またはランディングページの利便性が低い
  • キャンペーンのターゲティング範囲が狭すぎる

実際に Ad Grants アカウントを運用していると、消化が伸びない理由はこの4つのどれかに必ず当たります。そして厄介なのは、後半2つが「入札を上げれば解決する」種類の問題ではないことです。広告文とランディングページの中身を直さないかぎり、掲載順位は上がらず、枠は余り続けます。無償なのは広告枠であって、それを使い切る作業は無償になりません。

続けるために満たし続ける条件

Ad Grants は、審査に通った時点で終わりではありません。以下は運用中ずっと満たし続ける必要がある要件です。ひとつでも外れると、アカウントは一時停止の対象になります。

  • クリック率 5% 以上を毎月維持する — アカウント単位の要件で、キーワード単位ではありません。2か月連続で下回るとアカウントは一時的に停止されます
  • 1語のキーワードを使わない — 例外は団体が所有するブランド名、一般的な病名、頭字語など。ダッシュやピリオドを含む用語は1語として扱われません
  • 一般的すぎるキーワードを使わない — 公式の例は「電子書籍」「今日のニュース」「便利なアプリ」など。地名や人名の単独使用も不可ですが、「〇〇市の博物館」のような組み合わせは使えます
  • 品質スコア1・2のキーワードを残さない — 一時停止または削除が必須です。自動化ルールで機械的に止める運用が現実的です
  • 月1回以上のコンバージョンを獲得する — 有効なコンバージョン計測が前提です。滞在時間やトップページ閲覧のような指標は「コンバージョン」ではなく「その他」に置くよう指示されています
  • キャンペーンごとに広告グループを2つ以上、サイトリンクを2つ以上持つ
  • 地域ターゲティングを具体的に設定する — 全国配信のまま放置すると、アカウント構造を理由に無効化されることがあります
  • スマート自動入札を使う — 2019年4月22日以降に作成されたアカウントは、全キャンペーンでコンバージョン数の最大化・コンバージョン値の最大化・目標CPA・目標ROAS のいずれかを使う必要があります
  • 年次のプログラムアンケートに回答する — 未回答もアカウント無効化の理由になります

この一覧を見て気づくのは、要件のほとんどが「広告の質を落とすな」という一点に収れんしていることです。クリック率5%も、品質スコアの下限も、月1コンバージョンも、無償枠が的外れな広告で消費されることを防ぐための線引きです。

始める前に決めておくこと

順序を間違えると、審査に通ってから半年ほど空回りします。次の順で決めるのが安全です。

  • 1. 参加資格を確認する — Ad Grants は Google for Nonprofits の一部なので、まず同プログラムの団体確認を通す必要があります。政府事業体・政府組織、病院やヘルスケア企業、学校・教育機関・大学は対象外です。確認は Google の確認パートナーが行い、日本も対象国に含まれています
  • 2. コンバージョンを先に決める — 月1回以上という要件がある以上、「何をコンバージョンとするか」を広告開始前に決めておく必要があります。寄付・会員登録・資料請求・問い合わせなど、実際に月1件以上起きる行動を選びます。件数が足りない見込みなら、マイクロコンバージョンの考え方で中間行動を設計します
  • 3. 計測を作り切ってから入札を任せる — スマート自動入札が必須である以上、計測が不完全なまま始めると学習が成立しません。前提の詳細はスマート自動入札が「効かない」と感じたときに疑う3つの前提で整理しています
  • 4. ランディングページを先に用意する — 品質スコアとクリック率の要件は、結局のところ広告文とランディングページの質を問うものです。広告だけで満たせる要件ではありません

SINCEED ができること

当社はデジタルマーケティング支援の一環として、Google 広告の設計・運用を行っています。Ad Grants は無償枠という点だけが特殊で、キーワード設計・品質スコア・コンバージョン設計・自動入札といった運用の中身は有料の検索広告と同じ土俵にあります。「枠はあるのに消化できない」「一時停止の通知が来た」といった状態は、原因を分解すれば対処できるものがほとんどです。当社のGoogle Ad Grants 運用支援では、申請準備から配信設計、参加要件の維持までを承っています。状況の整理からご相談ください。

よくある質問

Ad Grants の枠は必ず毎月 10,000 米ドル使えますか?

使えません。10,000 米ドルは上限であり、公式も「制限であり、費用の保証ではない」と明記しています。実際の消化額は入札の競争力・広告の品質・検索ボリュームで決まります。

ディスプレイ広告や YouTube 広告にも使えますか?

無償枠の対象は Google.com に表示される検索広告です。それ以外の広告が必要な場合は、別アカウントで購入することになります。

アカウントが一時停止されたら、もう使えなくなりますか?

要件を満たすようアカウントを修正したうえで、再開(復元)をリクエストできます。ただし Google は理由や時期を問わず参加を許可・拒否する権利を持つと明記しているため、停止を前提にした運用は避けるべきです。

営利企業でも使えますか?

使えません。対象は非営利団体で、日本ではNPO法人や一般社団法人などが想定されます。ただし非営利であっても、政府事業体・政府組織、病院やヘルスケア企業、学校・教育機関・大学は対象外とされています。自団体が該当するかどうかは、Google for Nonprofits の参加資格ページと確認パートナーの手続きで確認してください。

クリック率5%は、どの単位で見ればよいですか?

アカウント単位です。キーワードごとに5%を維持する必要はありません。表示回数が多くクリック率の低いキーワードを止めていくと、アカウント全体の平均は上がります。

本記事の制度・要件は Google for Nonprofits および Ad Grants ヘルプの公式情報を2026年8月22日に確認した内容です。プログラムの条件は変更される場合があるため、実施時には公式の最新情報をご確認ください。

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